2016年イベント概要報告(02) 短編の書き方、長編の書き方

イベント資料01

トークイベントを開催するときには、いつも、PowerPointで作った資料を持ち込みます。こんな感じです(上記画像をクリックすると拡大) いつもは画像資料が多いのですが、今回は著作リスト・その他でした。初出データに関しては、公式サイトに正式なものがありますのでご参照下さい。ここでは、発表年代と単著への収録、版元の情報をわかりやすくした表を見せています。短編と長編とが、どのような形で相互関連しているのかが、よくわかります。

短編集『夢みる葦笛』(光文社/2016年)以前の作品では、同じく短編集である『魚舟・獣舟』(光文社文庫/2009年)と長編『華竜の宮』(上・下/現在、ハヤカワ文庫/初出2010年)が知られているため、新聞等のインタビューでも、「短編と長編では書き方が違うのですか」「違うとしたら、どのような点が違うのですか」という質問をよく受けるようになりました。結論から言うと、これは作家ごとに違うでしょう。短編と長編では書き方が違うとに指導している先生や、小説指南書も多いことと思います。

私(上田)自身は、短編も長編も同じ書き方をしています。これには作品世界をどう考えるかということが影響しています。私の作品では、テーマよりも先に世界があります。あらゆる物事に先行する形で、世界そのものが存在しています。その世界の有り様自体に意味があるので、テーマが必要ないと言ったほうがいいかもしれません。望遠カメラ、あるいは顕微鏡で、世界の一点にズームインしていくような感覚、それによって描くべき部分が見えてくる(わかる)のですが、狭い範囲だけにズームインしてそこを切り取れば短編に、あちこちにレンズを向け、広い範囲を観察すれば長編作品となります。作品自体の長さよりも、自分が何を見ているのか、どんな世界を見ているかということのほうが大切です。その世界が現実そのままであっても、作者の頭の中にしか存在しない幻想の世界であっても、創作行為そのものにおいてはその価値は等価です。重要なのは、その世界をどのような目で見ているのかという書き手の視線のほうです。これがなければ、どんな作品も始まりません。