名古屋でのトーク内容

名古屋SFシンポジウムについて、関連記事を別に作りました。当日は、海外SFレビュアーである渡辺英樹さんの司会で、4つのパートから構成されたトークが行われました。ここに、すべてを書き出すことはできないので、ごく一部だけをまとめています。

(1) 『破滅の王』について/30分。この作品が書かれたきっかけ、上海自然科学研究所という存在の重要性について。本作品は、この研究所に対する言及なくして語ることはできません。この点に関して、あらためて背景を詳しく説明していきました。資料と地図とを突き合わせた結果、著者がSF的な発想で到達した「ある動機」と、それを作品にどう組み込んだのかという話。
実在の人物と、架空の人物(一部、実在の人物がモデルになっている)の話について。歴史を背景に架空の物語を作るのではなく、現実の歴史そのものについて書くために虚構を利用する、という発想について。暗喩の使い方について。
細菌兵器の戦略と戦術に関しては、『ミューズ叢書<4> SF往復書簡』の中で、SF作家の町井登志夫さんとの対談でも話していますので、現時点では、最も正確な発言内容(説明)はこの本の中にあります。電子版でも販売していますので簡単に確認できます。

(2) 初期作品について/15分。小松左京賞のこと。小松左京賞は設立から既に19年が経過しており(終了からは9年)、当時のことを記憶している人も多くありません。そこで、賞が設立された動機から、受賞後、小松左京さんにお目にかかったときのエピソードまで、順々に語っていきました。小松左京賞に関しては、当事者として知っている記録を正確に残すという意味で、いずれ、きちんとまとめる機会を作りたいと考えています。

(3) オーシャンクロニクル・シリーズについて/30分。過去に別のイベントでも語っていますが、シリーズが始まったきっかけについて。著者がデビュー前から書きたかった海洋SFを、プロ作家デビューしたのち、紆余曲折の苦労を重ねながらどうやって商業作品化していったのか、その工夫について。以前話した内容に関しては、『ミューズ叢書<2> トークイベント記録』で読むことができます。
ところで、当日話した「ホットプルームで含水鉱物層を熱して『水』を乖離させる方法」ですが、実際の作品では、これは結局、海面上昇には使っていません。前後の話を抜いたため、不正確な伝え方になってしまいました。お詫び申し上げます。これに関しては「ミューズ叢書」発刊時に注釈で補足致します。ホットプルームと含水鉱物層の話は、最終的には、ストーリー半ばあたりで登場する現象の引き金として組み込んでいます。海面上昇の手段としてのホットプルームは、「海洋底を持ちあげる」ほうに使いました(後者に関しては、時間がなくて当日は説明できませんでした……)

(4) その他/5分。最新刊である、文庫版『薫香のカナピウム』について。文庫化の際、いろいろと手を加えている理由について。電子版『火星ダーク・バラード』の宣伝も。

実際のトークでは、ここに書き切れないほど多くの事柄を語りました。それらも含めて、活字化をお待ち下さい。