今日のつぶやき(23)  お勧め。色覚に関する本

●川端裕人さんの『「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚原論」』(筑摩書房)は、昨年10月に発売された瞬間から、ものすごい勢いで各方面からの反応があり、いまもそれが続いている状態です。かつては「色覚異常」と呼ばれたこともある “ヒトが色を識別する際の、ある特定の性質” が、実は異常でもなんでもなく、このような色の識別能力ひとつ取っても、ヒトは様々なパターンを保持・利用していることがわかり、いまでは「色覚多様性」という言葉が提唱される社会へと変わりつつあります。本作は、そのような、科学の知見の最先端をリポートした本です。
 
 川端さん自身も、子供時代に色覚検査で嫌な体験をなさっており(石原式の検査には引っかかるが、日常的には、検査をパスする人と同じように色が見えているので何も困らない。しかし、検査結果を知った周囲から、異質な存在として見られてしまう……)このお話、私は川端裕人さんが発行しているメルマガ(「秘密基地からハッシン!」)で、何年か前から先行して読んでいたので、この本には、発刊前からとても期待していました。完成した本は、広く、遠くへ届くように配慮された、まさに渾身の一冊です。
 なんらかの形で、ヒトの色覚について学ぶ必要がある方、新しい知識を得たい方には、とてもお勧めできる一冊です。幸い、オンライン書店のレビューでも高評価がついているようです。少し前にはトークイベントもありました。届くべきところへ、きちんと届いた結果でしょう。

●この本を読んであらためて強く感じたのは、科学が、知識や発見によって、社会の古い価値感を変えていく――その強さです。科学が前向きな力で、人と、社会を変えていく。そのために必要な道を、またひとつ、切り開いて下さった本なのだと感じます。